人生100年時代。一時期は「老後資金2000万円問題」という言葉が全国に波紋を呼びました。現代人なら大半の方が心配する老後資金の問題。そして老後資金に大きな影響を与える退職金。
残念ながらフリーランスエンジニアには退職金はありません・・・
ですので今回は「フリーランスエンジニアには退職金がない!」というテーマについてお話ししていきます!
会社員であればほとんどの場合、会社を退職するときや定年退職をする際には退職金が支給されます。これは大半の方が助かる仕組みだと思います。
一方のフリーランスエンジニアは案件を変えようが、仕事を辞めようがそもそも退職金という概念はないのです。
“退職金があれば老後の資金になるし、絶対に会社員の方がいいじゃん!”
そう思われる方も少なくありません。
では本当に退職金のある会社員の方が良いのでしょうか?退職金がないフリーランスエンジニアは老後を生き抜く事はできるのでしょうか?退職金がないフリーランスエンジニアが老後の生き抜くためにはどのように資産形成したらいいのか?
こちらについて一緒に考えていきましょう!
実際のところ老後資金はいくら必要なのか?
まず退職金の要否を話す上で、老後資金が果たしていくら必要なのか?ということが重要になってきます。
前提となる情報として、総務省の家計調査報告(家庭収支編)の内容をもとに説明していきます。高齢夫婦の無職の世帯の公的年金などの社会保障給付(収入)は1ヶ月に約19万円と記されています。反対に高齢夫婦の無職の世帯の月々の支出は約27万円になります。このデータから月々に約8万円、年間で約96万円が不足することとなります。
例えば、完全に退職したのが65歳で90歳まで生存したと仮定します。その場合の老後期間は25年になりますので、不足分は約2400万円が必要ということになります。この金額はあくまで最低限の生活をした時のみを考慮した目安の金額となります。それ以外にも、様々な出費があることを忘れてはなりません。家のリフォームや自動車の購入、医療費や娯楽などを考えると、老後に必要な資金は約3000万円は目安として考えておくべきでしょう。
ただこの数字はあくまで現代のデータをベースに算出した金額ですので、今後定年や寿命が変わる可能性もあるため、あくまでも目安として考えましょう。
退職金のないフリーランスエンジニアが老後資金を蓄えるために
あくまで目安の老後資金が約3000万円ということががわかりましたので、次にフリーランスエンジニアがどのようにしてそのような大金を蓄えていくのかについて考えていきます。
まず初めに貯蓄の一番の王道が「預金」です。預金には普通預金、定期預金、積立定期預金などが対象となります。特に多く利用されているのが積立定期預金です。積立定期預金は毎月定額を銀行の預金口座に入金する預金です。
今回の老後資金の目安を3000万円としましたので、例えば25歳から65歳まで積立定期預金をした場合の積立額は、年間700,000円、月々にすると62,500円を蓄える必要があります。
フリーランスエンジニアの場合、20代の平均年収は約700万円と言われていますので、この数字だけ見ると毎月約6万円を預金に回す事は難しい事ではないと思います。ただ、フリーランスという働き方は仕事の有無や社会的不況の影響を大いに受ける働き方ですので、決して安心してはなりません。また、出費には様々なケースが考えられますので、それに対するリスクヘッジをしましょう。機械の故障や、仮に案件を途切らせてしまった時、その他諸々の出費のリスクの可能性を考える必要があります。
毎月6万円ではいつどんな状況になるかわかりませんので、念には念をでできるだけ多くを蓄える必要があると言えます。
とはいえ、会社員の平均年収は340万円と言われていますので、それと比較するとやはりフリーランスエンジニアは夢のある働き方と言えます。
さらにお金に困らない生活をしたいという方は、NISA口座やiDeCoのような資産形成に有利な制度がありますので、そちらをうまく活用するのも良いでしょう。投資信託や株式投資、不動産投資などについても調べてみると良いでしょう。ただし、これらは景気の影響を直に受けるものですので、購入する際は慎重に選ぶことが大切です。
業界の傾向から退職金を考える
それでも「やっぱり退職金がないと不安だ!」そんな風に考える方もいるかもしれません。
IT業界の傾向として、一つの会社で勤め上げるといった風潮は限りなく薄いです。また、現代では転職することに対しほとんど抵抗がない転職時代なのです!会社員エンジニアでも3〜6回、またはそれ以上転職されている方はザラにいます。
退職する理由として「会社がブラック」や「スキルアップ」など自己都合で転職されることが多くあります。ご存知かとは思いますが、自己都合で転職をすると退職金を満額もらう事はできません。ですので、IT業界ではあまり退職金に価値が出づらいのが現実です。
実際に、中小企業の場合の大卒の平均定年退職金額は1,118万円という結果が出ています。(東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」)
業界の傾向から、自己都合で退職されるケースが多いため、退職金の総額が平均額を大きく下回ることが十分に考えられます。「老後資金の3000万円を蓄えるためには月々約6万円蓄える必要がある」というのは会社員エンジニアの方も意識しなくてはならない数字だと言えます。
退職金を現在価値に直すと悲惨なことに・・・
”フリーランスには退職金がないから損!”
本当にそうなのでしょうか?
大手企業の会社員の場合、勤続年数30年での退職金が約2000万円になるそうです。一言に2000万円と聞くとかなりの大金に聞こえますが、ここで一度考え方を変えてみましょう。
ここでは現在価値について考えてみます。現在価値とは、現状ある資金から割引率を使って、将来に発生する価値を現時点での価値に直したものです。
例えば、リターンが3%の投資商品(このくらいの利回りの商品が一般的に多い)に投資したとします。会社員が働いた年数と同じ30年間投資で複利運用します。退職金と同額の2000万円にするには、どのくらいの金額を運用したら2000万円になると思いますか?
答えは823万円です。
投資商品にはさまざまな運用方法がありますので、たらればの話になってしまいますが、823万円の貯金があれば運用次第で30年間の退職金くらいにはなるかもしれないのです。ですので、退職金の価値は将来的には2000万円であっても、現時点では823万円の価値しかないという風にも考えることもできるのです。
また先にも話しましたが、IT業界は「転職は当然」という風潮がありますので、退職金が満額もらえないことを想定すると、勤続年数や会社の方針にもよりますが、退職金が十分にもらえないことも考慮すべきなのです。
会社員やフリーランスなど働き方に関わらずお金に関する知識はとても重要だと言えます。
最後に
いかがでしたか?今回はとても基本的な考え方を説明しました。
しかし「もっとフリーランスエンジニアとしてより良い生活を送りたい!」「しっかり資金を蓄えて安心できる老後を過ごしたい!」という方がいましたら、是非【資産運用入門 vol1】フリーランスエンジニアのための資産運用のススメをご覧ください!ここでは資産運用に関する内容を具体的に解説していますのできっとあなたのお役に立てると思います。
会社員として働くこと、フリーランスエンジニアとして働くこと、人には人の数だけ人生があります。あなたはどのような働き方で老後に備えたいですか?