令和5年10月から開始予定の「インボイス制度」は、フリーランスの方へ非常にネガティブなイメージを与えています。
インボイス制度の開始は、大半のフリーランスの方にとって収入や取引の減少に繋がる大きな要因となり得るでしょう。ですので、フリーランス(個人事業主)の方はインボイス制度が与える影響をしっかりと把握しておく必要があります。
本記事では「フリーランスエンジニア」に焦点を当て、インボイス制度が与える影響を考えていきます。
✔︎インボイス制度の内容をまだしっかりと把握されていない方
下記の記事を先に読むと、本記事の内容の理解がより深まりますので、是非一度目を通してみてください。
【個人事業主は終了】インボイス制度は知らないとヤバい!
先にお伝えしますが、弊社ではインボイス制度開始後も「フリーランスエンジニアは稼げる」と考えています。本記事では、その理由と稼げるフリーランスエンジニアであるために意識すべきことについて詳しく解説していきます。
インボイス制度開始後もフリーランスエンジニアが稼げる理由
”インボイス制度が始まってもフリーランスエンジニアは稼げる”と言われて「本当に?」と思った方もいるかもしれません。実際にインボイス制度を理解されている方であれば、フリーランスにとってデメリットが多い制度ですので、無理もないです。
インボイス制度が始まってもフリーランスエンジニアが稼げる理由は、下記の通りです。
理由① IT業界のエンジニア不足
エンジニアの方であればもちろんご存知かと思いますが、日本のIT業界では「エンジニア不足」という深刻な課題を抱えています。
念のためご紹介しますが、経済産業省の調べによると2030年までに40万〜80万人ものIT人材が不足するかもしれないという調査結果が出ています。
2030年までのIT人材の不足数を推計すると、労働集約業態となっている日本のIT人材の低生産性を前提とすれば、将来的に40〜80万人の規模で不足が生じる懸念があることも試算された。
経済産業省:参考資料(IT人材育成の状況等について)5ページ
上記から分かるように、今後の日本の経済は完全にエンジニアの売り手市場なのです。それにより、インボイス制度による価格転嫁は起きにくいと予想されます。
インボイス制度は、主に消費税に関するデメリットの大きい制度です。しかし、現代ではIT戦略が欠かせない時代となっていますので、企業としてIT技術を導入しなければ時代の流れに乗り遅れてしまいます。
つまり、消費税の控除が減ったとしても、企業としては貴重なIT技術者ですのでエンジニアに依頼するほかないのです。
理由② フリーランスエンジニアの約半数は1000万円超を稼いでいる
これからフリーランスエンジニアになろうと思っている方は特に、インボイス制度開始にあたり、「フリーランスの方が良いか、会社員の方が良いか」は悩みどころだと思います。
インボイス制度の仕組みとして、「課税事業者と免税事業者が取引をする際、双方にデメリットが生じる」という特徴が挙げられます。課税事業者同士の取引は今まで通りです。
フリーランス協会の調査によると、フリーランスエンジニアの約43%は課税事業者であると言われています。
フリーランスの消費税の転嫁の実態や請求業務に関する実態調査報告書(8ページ)
この調査結果から、「年間で1000万円以上を売り上げているフリーランスエンジニアが約2人に1人いる」ということが読み取れます。
ですので、今後フリーランスエンジニアを目指そうと思っている方も、将来的には1000万円超の売上を見込むことができます。
インボイス制度に関係なく、「将来的には消費税を納める可能性が高い」という考え方になります。
法人成りを検討してみる
理由②でも記した通り、フリーランスエンジニアの年間売上は1000万円に上る確率が高いです。
フリーランスエンジニアに限った話ではありませんが、フリーランスエンジニアは収入の高い働き方ですので、法人成りしやすく、節税のメリットもあります。
よく個人事業主から法人成りを検討する目安は、所得が700万円から800万円を超えたタイミングと言われています。そのくらいの所得を得ると、法人成りした方が節税のメリットが高いからです。
法人成りするメリットは色々とありますが、ここではメリットを3つご紹介します。
メリット1. 設立日から2年間の消費税免除を受けられる
法人成りすることで最高2年間の消費税の免除を受けることができます。消費税免除は、インボイス制度にも直結するメリットです。
ただし消費税の免除を受けるためには、下記の条件に該当する必要があります。
- 資本金が1000万円以下であること
- 特定期間の売上額が1000万円以下であること
- 特定期間の給与等支払額の合計額が1000万円以下であること
- 1期目から課税事業者選択届出書を提出した場合
※特定期間・・・事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月
メリット2. 一定の所得額から税負担が軽くなる
個人事業主と法人とでは、所得に対する税金の種類が異なります。個人事業主の場合は「所得税」、法人の場合は「法人税」となります。
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円超 330万円以下 | 10% |
330万円超 695万円以下 | 20% |
695万円以上 900万円以下 | 23% |
900万円以上 1800万円以下 | 33% |
1800万円以上 | 40% |
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
800万円以下 | 15% |
800万円超 | 23.20% |
上記の通り、所得額が900万円を超えると、法人の方が所得に対する税金の負担が軽くなります。
メリット3. 信用が高くなる
個人事業主であれば、社会的な信用で悩まれている方も多いのではないでしょうか?
法人成りすることで、取引先や金融機関からの信用が高くなります。信用を得ることで、取引の拡大や融資などが行いやすくなります。
稼げるフリーランスエンジニアであり続けるために意識すべきこと
ここでは、フリーランスエンジニアが稼ぎ続けるために注意すべきポイントを3つご紹介します。
①フリーランスエンジニアであれば誰でも稼げるというわけではない
ここまで「インボイス制度開始後もフリーランスエンジニアは稼げる」と言ってきましたが、フリーランスエンジニア全員に該当するわけではありません。
稼げるフリーランスエンジニアであるためには、意識の持ち方が重要です。
貴重なエンジニアとはいえ、成果を上げられなかったり怠慢な仕事をしているエンジニアは、インボイス制度と関係なく仕事を失ってしまいます。
免税事業者であるフリーランスエンジニアは、インボイス制度による価格転嫁や取引の中止などが起こらないためにも、日頃の勤務態度や自らのバリューを発揮する必要があります。
②クライアントは損をする
これは、免税事業者のフリーランスエンジニアが意識すべきことです。
免税事業者のフリーランスエンジニアである以上、クライアントから消費税分の値引き交渉や取引の中止を求められる可能性があります。
免税事業者であるフリーランスエンジニアである場合、取引先のクライアントは消費税の面で損をすることになります。
それでも契約を継続してくれたり、消費税分の値引きが無かったりした際には、感謝を込めてより一層クライアントに尽くしましょう。
③課税事業者になった方が安心
現在、免税事業者のフリーランスエンジニアは令和5年3月末までに「課税事業者になるか、免税事業者のままか」を決断しなければなりません。
特にフリーランスエージェントを利用している免税事業者のフリーランスエンジニアは、取引先が課税事業者であることが多いため、「あのエンジニアと取引をすると消費税の面で損をする」と思われないためにも、課税事業者になることも検討すべきです。
エンジニアは世の中にとって需要の高い存在ではありますが、万が一、免税事業者であるが故に案件を獲得できなくなってしまうと元も子もありません。
課税事業者となることで消費税の納付は義務付けられますが、案件獲得への影響はほとんどありませんので、その点も踏まえて「課税事業者なのか、免税事業者のままか」を考えていくと良いです。
最後に
前述した通り、フリーランスエンジニアであっても”日頃の業務にあたる姿勢”や、”課税事業者なのか、免税事業者のままか”は考えていかなければなりません。
自分の身を守るためにも、インボイス制度の仕組みや影響はしっかりと理解しておきましょう。
ですが、やはり企業のIT戦略にとってエンジニアは欠かせない存在です。幸運なことに、フリーランスエンジニアは今後も稼ぎ続けることができると予想されます。
これからフリーランスエンジニアを目指したい方は、下記の記事もぜひ参考にしてください。
【フリーランスエンジニアになりたい方必見】技術力はそこまで必要ではないことが発覚!
現代では、IT戦略を制した企業が規模の拡大に成功しています。今後もエンジニアの需要は高まるばかりです。
インボイス制度が開始しても、フリーランスエンジニアは挑戦する価値の高い働き方と言えるでしょう。